Lens Impression
RÜO Optik GMBHのカタログ(1924)にも登場しない大口径f1.5のレンズです。カタログには同名レンズでは4.2cmf2.0までの記載はありますが、残念ながらレンズ構成についてはf3.5、f2.5系列がトリプレットであること以外は書かれておりません。リュオOPTIK社の4.2cmf1.5のレンズとしてはCaleinarというレンズの存在も知られていますが、全く同じスペックでのリュオ・キノレンズは初めてです。ただしレンズ構成が同じかどうかは確認できておりません。中将姫光学さんからお借りしました。
反射面の数と左右の動き、さらにレンズの曲率を参考にスピーディック型の変形ではないかと想定しました。
ほとんど球面収差補正に手を付けていないのではないかと疑いたくなるような画像の滲み方をするレンズです。その関係でピントの収束範囲と拡散範囲が大きく重なっており、拡大画像で確認すると、開放では全画面にフレアがかかっていると同時に、画面上の多くの部分でピントの合致した画像が確認できます。なんとも難しいレンズですね。
コマ収差なども見られますが、球面収差が多いので、f4程度まで絞ると急激に画像が改善します。ただし、そうなると普通のちょっと写りの悪いレンズになってしまいますね。
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Rüo Optik G.m.b.H.とも称される「Optische-Werke Rüdersdorf」は非常に資料・情報の少ない会社で、詳しいことは不明である。1919-20年頃「Rüdersdorf」という名称でドイツ・ブレーメン(童話:ブレーメンの音楽隊で有名)で設立され、1922年に「Optische Werke AG, Bremen」と名称を変更、その直後にはベルリンに移り、「Optische-Werke Rüdersdorf A.G.」という社名になったとされる。出資したのは現在のドイツ・シュローダーグループの源流ともなったJ.F.シュローダー商業銀行であった。
しかしわずか10年未満の活動の後、1932年に活動を停止してしまう。そのあたりの経緯も全く不明であり、それが同社に対する興味をさらに掻き立てるところでもある。
レンズ名の「Rüo」 もしくは「Rüo Optik」は同社の商標・商品ブランド名だと考えてよいだろう。
レンズ設計に関しては、このレンズの特許と思われる上記に記された「Hugo Hahn」の名前のみが知られている。同社の極めて短期間の活動期間のなかで、特許が判明している「DE382193(1922申請)」「DE461083(1925申請)」ともにHahnの名前で申請されているので、多くのレンズが彼の設計であったと考えてよいであろう。なお、Hahnは後に同社の経営者の一人となったようである。
1924年発行の同社カタログによると、その時点でのレンズラインアップは以下の通りである。
①Rüo Anastigmat Hekistar 7.5cm - 30cm f3.5
②Rüo Anastigmat Acomar 5cm - 42cm f4.5
③Rüo Anastigmat Tular 7.5cm - 21cm f6.3
④Rüo Anastigmat Iricentor 4cm - 30cm f6.3
⑤Rüo Tele Anastigmat 11cm - 34cm f4.5,f6.3,f7.5
⑥Rüo Kino Aufnahme Anastigmate 32mm - 100mm f3.5,32mm - 100mmf2.5, 35mm - 42mm f2.0
⑦Rüo Kino Projektions Anastigmate 22mm - 120mm f2.5
Rüo Kino には撮影用と映写用の2種類がラインアップされており、どちらにも42mmという焦点距離は存在するが、f1.5という開放f値のものは記載されていない。
特別な目的でかなり限られた数量生産されたものと考えられるが、具体的には不明である。
さらに、4.2cmf1.5にはRüo Caleinar 4.2cmf1.5というレンズも存在しているが、Rüo Kinoとの実物比較はできていない。画像で確認する限りにおいては、サイズ的にも類似しているようだ。シリアル番号も10000番台から20000番台への後期の番号帯で共通していること、さらに、Rüo
Caleinar 4.2cmf1.5の鏡胴には同レンズの特許として、D.R.P461083と刻まれており、今回のRüo Kino 4.2cmf1.5とレンズ構成が同じ変形エルノスター型であると考えられることから、同一レンズ別名称である可能性が高いと判断される。
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